まず「種」の話からはじめよう
農業の歴史は「種を選ぶ」歴史でもあります。農家は毎年の収穫の中から できのよい実を選び、その種を次の年にまく——という行為を何世代も繰り返してきました。 これを「自家採種(じかさいしゅ)」といいます。
しかし現代の農業では、この「当たり前」が大きく変わりつつあります。
3種類の種、何が違うの?
固定種(こていしゅ)
優れた個体を何世代も選び続けることで、形質が安定した品種。 種を採って翌年まいても同じような野菜が育ちます。 「自家採種できる種」の代名詞です。形が不揃いなものもありますが、 味の濃さや土地への適応力に優れるものが多いです。
在来種(ざいらいしゅ)
固定種の中でも、特定の地域で何百年もかけて受け継がれてきた品種。 京都の賀茂なす・万願寺とうがらし、長野の野沢菜、 東京の練馬大根など、各地の伝統野菜がこれにあたります。 その土地の気候・風土と一体化した「地域の宝」です。
F1種(エフワンしゅ)一代雑種
性質の異なる2つの純系品種を掛け合わせた「一代雑種」。 F1とは「Filial 1(第一世代)」の略です。 均質・高収量・見た目がきれいという特性から、 現代農業では主流となっています。ただし、種を採っても次世代に同じ性質が出ないため、 毎年種を購入する必要があります。
F1種のメリット・デメリット
F1種が農業を変えたのは事実です。収量が大幅に増え、形が均一になったことでスーパーの流通に乗りやすくなり、 安定供給を実現しました。しかし課題もあります。
メリット
- ・収量が多く安定している
- ・形・大きさが均一
- ・病気に強い品種が多い
- ・大量流通・スーパー向きの規格
デメリット
- ・自家採種ができない
- ・毎年種を購入する必要がある
- ・少数の大企業が種市場を寡占
- ・遺伝的多様性が失われやすい
なぜ今、固定種・在来種が注目されているの?
食料安全保障の観点から
輸入に頼る食料・種子供給が地政学リスクと直面する中、自家採種できる固定種は「食の自立」の象徴として再評価されています。
生物多様性の保全
FAO(国連食糧農業機関)によれば、20世紀中に食用植物の約75%の遺伝的多様性が失われました。固定種・在来種はその多様性を守る「種の図書館」です。
味と個性の豊かさ
均一なF1種にはない、甘み・苦み・香りのバランスが固定種にはあります。「昔の味がする」という声も多く、グルメ・レストラン需要が高まっています。
農家の自立・コスト削減
毎年種を買わずに済む固定種は、農家の経営コストを下げ、大企業への依存から解放される手段でもあります。
日本の伝統野菜——在来種の宝庫
各都道府県には、長年受け継がれてきた個性豊かな在来野菜があります。 その多くが今、絶滅の危機に立たされています。
| ブランド名 | 地域 | 代表品種 |
|---|---|---|
| 京野菜 | 京都府 | 賀茂なす、万願寺とうがらし、水菜 |
| 加賀野菜 | 石川県(金沢) | 源助大根、金時草、加賀れんこん |
| 信州の伝統野菜 | 長野県 | 野沢菜、川中島白桃、みすず豆 |
| 江戸東京野菜 | 東京都 | 練馬大根、亀戸大根、東京うど |
| 在来大豆 | 全国 | 丹波黒(兵庫)、秘伝豆(東北) |
固定種野菜を手に入れるには?
農家の直売所・道の駅
地元農家が固定種・在来種を直接販売していることが多いです。
有機野菜の宅配サービス
大地を守る会・食べチョクなど、固定種を扱う農家も登録されています。
固定種専門の種苗店
野口種苗・たねの森などで種を購入し、家庭菜園で自分で育てることもできます。
MUSUBIで農家を直接支援
固定種栽培農家のサブスク・クラウドファンディングで応援し、返礼として野菜を受け取れます。
MUSUBIでできること
固定種を守る農家と、直接つながろう
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